さいだねブログ

あなたのさいだね(才能のたね)は何ですか?

井上靖の短編小説


宮本輝 編 『魂がふるえるとき―心に残る物語 日本文学秀作選 (文春文庫)』を今読んでいます。


文春文庫創刊30周年記念企画で、浅田次郎 編 『見上げれば星は天に満ちて―心に残る物語 日本文学秀作選 (文春文庫)』も出版されています。



良質な日本文学を読みたいと思っても、どこから手をつけてよいのかわからない。

そんな人(私もそうです)には、もってこいの本です。



日本の近代文学の魅力に触れることができる一冊です。
それに短編集なので、気合を入れなくても読み進められます。



その中の一作品、井上靖の『人妻』に、さいだねを感じました。



この作品は、わずか1ページ。
宮本輝のあとがきによると、400時字詰原稿用紙で2枚とのこと。



私の言語力で説明するのは申し訳ないのですが、

一言で表現すると、

“若者の人妻への想いの変化”です。



“氏の才能をもってすれば、
1000枚の長編に仕立てるくらいは意図も簡単であろう”


宮本輝はこう書いています。



情動が凝縮されています。


情景が映像として浮かび、時間の流れと心の変化も感じ取れます。



井上靖の圧倒的なさいだねを見せられた、というか、読ませられた、と言う感じです。


これを選んだ宮本輝さいだねにも拍手です。



井上靖のようなさいだね、自分にはないよ〜、
別世界の話やん、と思うかもしれません。



ちょっと日常を思い出してください。


他の人に何かを伝えるときを思い出してください。
・・・・・・・


大抵の人は、重要な部分を相手に伝えます。

いろんなストーリーは、端折ります。

一から話すと1時間かかることを、1分で伝える。



私たちは、いつもしています。

井上靖と同じことを!です。



井上靖は小説で表現しているだけ。

私たちはというと、日常のコミュニケーションで表現しています。



人の心に伝わる表現を意識してコミュニケーションする。

これって大切だなとあらためて思いました。



この短編集はオススメです。

今読んでもまったく色褪せない、近代日本文学のすばらしさを堪能できます。