合格するまで、ちゃんと送り届ける
この小説は、いくつかの短編で構成されています。
いちばん最初の『1983年のほたる』というタイトルのお話。
街の進学塾にバスで通う小学6年生の少女に、バスの運転手が話しかけます。
おれは、あんたが合格するまで、ちゃんと送り届けるのが仕事だと思ってたんだよ
この言葉がとても響きました。
このバスの運転手は、バスのある乗り場から、乗客が行きたい降り場まで、
安全に送り届ける、というとらえ方ではなく、
少女がバスを利用する、その行動のもとになる原動力、“希望の中学に合格する”まで、
少女の人生の一部を担っている、というとらえ方のように感じました。
日々、繰り返す業務。
お客さんを乗せて降ろしての繰り返し。
このバスの運転手のように、一人ひとりの生活や事情まで考えると、
単調な仕事がまったく違って見えてきます。
仕事に対する姿勢も変わります。
仕事で関わる人の背景や事情まで考えると、
仕事での体験が、今までとまったく違うものになるように思います。
もちろん、仕事が楽しくなる体験です!